【自作キーボード】CorneのCNCアルミケースを自作してJLCPCBに発注してみた【Cörnium】

corne v4.1 Aluminum Case

こんにちはこんばんは、きりぽんです。

今回は、昨年手に入れたCorne v4.1基板を活用するために、CNCアルミケースを設計・製作したので、その過程を簡単に記事にしてみたいと思います。動画でも紹介していますが、説明しきれなかった部分をブログで補足できればと思います。

余談ですが、筆者は設計やデザインに関する特別なスキルを持っているわけではなく、あくまで趣味レベルの初心者です。気合と情熱だけで挑戦した体験談としてご覧いただければ幸いです。アルミ化を検討している方や、プレートの外注を考えている方にとって、少しでも参考になればと思いこの記事を書きました。

きりぽん

Corne + aluminum = Cörnium(仮) と名づけておきます。ウムラウトのöはデザインが好きだからというだけの理由です。

Cörniumの動画

YOUTUBE CHECK NOW!


久しぶりに動画も作ってみました!今回はカメラを新調し、動画内のナレーションも外注して仕上げてみました。時間がある時に暇つぶしにでも良かったらぜひご覧ください。

Fusionで設計

Corneの自作ケース(インテグレーテッドマウント)
手元にあったのは基板だけだったので、スイッチプレートも一体化させたインテグレーテッドマウントでケースを設計しました。

MEMO
インテグレーテッドマウントとはケースのトッププレート(上ケース)とスイッチの固定部分が一体化しており、構造がシンプルで剛性が高くなるマウント方式。内部パーツが少なくなるため、コストや組み立ての手間を抑えることができます。

Corneの基板データCorneの基板データは作者のfoostanさんがGitHubに公開されていたのでお借りしてKicadから3DデータをエクスポートしてFusionにインポート。 メッシュとして読み込んでスケッチしていく流れで意外とスムーズに進みました。

参考

Corne keyboardGitHub

JLCPCBで試作

Corneの自作ケース(インテグレーテッドマウント)
設計したデータをそのままJLCPCBの3Dプリントサービスに投げてみました。が、組んでみると、ケースと基板の隙間が想定より狭すぎてキツキツ。無理やり押し込んだ感じが否めない仕上がりに。

Corneの自作ケース(インテグレーテッドマウント)の失敗例
はい———完全にやらかしました。クリアランスを考えずに設計していたんです。JLCPCBの設計ガイドラインには、最小でも0.2mmのクリアランスを確保しましょうとしっかり書いてありました。

参考

3Dプリント設計ガイドラインJLC3DP

きりぽん

このケースは2ヶ月ほど使ってみたんですが、やっぱり納得がいかなくて再設計を決意しました。

BambuLab A1 miniを導入

BambuLab A1 mini
ちょうどBambuLab A1 miniがセール中だったタイミングで3Dプリンタを導入。購入した理由は毎回JLCに外注してたらコストが嵩みすぎるので、なるべく低コストで納得行くまで試作を繰り返したいと思ったからです。

a1mini
今までスペースの都合で購入を避けていましたが、使ってみると「もっと早く買えばよかった…!」と誰もが通りそうな後悔も経験してみた。

corne のケースを試作
試作を繰り返しながら、ガスケットマウント構造のケースに変更。3Dプリンターで手軽に出力できるおかげで試行錯誤は捗りますが、ちょっとミスすると気になって直して出力と繰り返しつい調子に乗って出力しまくった結果——無駄打ち大量発生!

MEMO
ガスケットマウントとはプレートとケースの間に柔らかい素材(シリコンやポロンなど)を挟んで固定する方式。打鍵時の衝撃を吸収し、打鍵感が柔らかくなります。

Corneのケースの試作が完成
というわけで、ガスケットマウント構造に変更した3Dプリント版のケースが完成!この時点であるていど満足度の高い仕上がりにはなってきました。

きりぽん

3Dプリンタを手に入れ調子に乗り無駄に出力してしまったが、繰り返すことで少しは学べることがあったかもです。

パームレスト設計

パームレストを自作
3Dプリンタを導入したので、ケースに合わせてパームレストも自作しました。以前、Alibabaで外注して作ったものは、見た目を優先して全体的に丸みを持たせたデザインにしたのですが、実際に使ってみると高さや角度が合わず、長時間の使用では本来の機能が損なわれ気味という問題がありました。ステータス振り分けを見た目に全振りしたのが間違えだったかも。

【自作キーボード】パームレストをAlibabaのRFQを使って外注してみた【木材CNC加工】
【自作キーボード】パームレストをAlibabaのRFQを使って外注してみた【木材CNC加工】

パームレスト横
今回はその反省を踏まえて、機能性を第一に考え、手の自然な角度に沿うよう緩やかな傾斜をつけて設計しました。見た目の一体感にもこだわりながら、タイピング時に手首が無理なく乗る高さと角度に調整しています。

パームレスト試作品
完成したパームレストは、手首の負担が大きく軽減されて明らかに使いやすくなり、ようやく実用的と言える仕上がりになりました。

きりぽん

3Dプリンタでの造形あまり綺麗にできなかったけどパームレストの正解が分かった気がするかも。

CNCアルミケース用に再設計

3Dプリントケースの完成品
3Dプリントで作ったケースはかなり気に入っていましたが、使っているうちに「これ、アルミで作ったらもっと所有欲を満たせるのでは?」と思うようになりました。ちょうどCNC加工にも興味があったので、せっかくならアルミ用にケースを再設計してみることに。

自作キーボード設計ガイド Vol.2 ケース設計編
参考にしたのは初めてコミケに行ったときに買ったサリチル酸さんの「自作キーボード設計ガイド Vol.2 ケース設計編」です。

参考

自作キーボード設計ガイド Vol2 ケース設計編自キ温泉街販売所

CNC用に設計する中で気をつけたのは、削るためのドリルがどう入るのかといったところです。ネジ穴の位置や内側の構造も加工しやすいように調整しました。

ネジ固定に変更
また、3Dプリント版では上下をマグネットで固定していましたが、アルミ版ではネジ固定に変更しました。マグネットも良いのですがやっぱりネジで固定したほうが安定感はあるかと。あと、今回はケースの底にウエイトをつける設計にしたのでそちらもネジでしっかり固定できるようにしています。

位置合わせ用
上下パーツを組み合わせる際の位置合わせがスムーズにできるよう、嵌め合い用の凹凸も追加しました。こういう部分を省くと、後からネジ止め時にイライラするのが目に見えていたので。

Corneの自作ケースの図面
図面も忘れずに作っておきました。上下ピースを左右とスイッチプレートとウエイト(2種類)で合計8枚分です。ちなみにJLCPCBの場合はネジ穴の指定だけ記載すれば問題なさそう。

最後に簡単なモックを3Dプリンタで出力して、見た目やサイズ感、打鍵感をチェック。問題なさそうだったので、このデータを元にCNC加工の依頼先を探すことにしました。

CNC外注先の選定

項目JLCPCB CNCAlibaba RFQ
注文方法サイトで完結見積・交渉必須
最低注文数1個からOK業者により異なる
納期約2週間工場次第
価格安価ではないが手の届く金額量産なら安くなる(交渉次第)
カスタム性制限あり細かく指定可
コミュニケーション不要(アップのみ)必要(英文チャット)
用途試作・少量向け量産・高品質向け

CNCの外注先として今回検討したのはJLCPCBのCNCサービスかAlibabaのRFQです。ざっくりですが比較表も作ってみました。主な違いとしては、注文の手軽さと対応の柔軟性にあります。

JLCPCB

JLCPCBのCNCサービス
JLCPCBはWeb上で簡単に見積もり・注文まで完結でき、1個から発注できる点が魅力です。納期も比較的早く、試作や少量生産に非常に向いています。

Alibaba

AlibabaのRFQ
一方、AlibabaのRFQでは各工場と英語でやり取りしながら仕様を詰めていく必要があるものの、材質・加工精度・仕上げオプションなどの自由度が高く、量産や特殊加工に対応しやすいという利点があります。MOQ(最小注文数)が10以上だったりお国柄か結構煽ってくる営業スタイルの方が多いのでメンタルは削られます。

それぞれに強みがあるため、「とりあえず形にしたい」という段階ではJLCPCBが便利で、「素材や品質や仕様にこだわってしっかり作り込みたい」場合にはAlibabaが適しています。料金としてはAlibabaの場合は100個からの発注で、単価は驚くほど安くなるケースもあります。

タオバオ

淘宝タオバオ
ちなみに、スイッチプレートはJLCPCBやAlibabaでは割高だったので、少しでもコストを減らしたいと思いタオバオのカスタムキーボード専門店みたいなショップ(ニューランファプラスチックス)に外注しました。

スイッチプレートの外注
メッセージで必要なデータを投げて素材を選択する素材もCFやPCやPOMなども多種多様で送料を別途払ったとしても安い。掲載した実際の注文履歴の画像の例ではPC(ポリカーボネート)で左右10セットで220元でした。中国語に抵抗がなく低コスト志向の方には非常におすすめのルートです。

きりぽん

今回はJLCPCBの担当者に相談してスポンサーになって頂きました。

CNCパーツ到着・検品

JLCPCBのCNCサービスの梱包
というわけでCNC加工のアルミケースが届きました。手元に届くまでは約2週間掛かりました。

JLCPCBのCNCサービスで作った自作ケース
今回はアルミニウム6061素材に、ビーズブラスト+陽極酸化(ナチュラル)の光沢仕上げを選びました。手触りはサラッとしたマットな質感で、光の当たり方によって柔らかく反射します。

JLCPCBのCNCサービスの製造で傷があった
届いたパーツをチェックしたところ、一部に細かな傷はあったものの、全体としては上々の仕上がり。ネジ穴の位置や嵌合部分の精度には問題なく、組み立てはスムーズでした。ただし、各種寸法をノギス等で詳細に計測していないため、全体的な精度についてはまだ未検証です。

JLCPCBのCNCサービスで作った銅製のウエイト
今回あわせてケース底面に取り付けるウエイトも製作しており、素材は銅(T2)、仕上げは鏡面研磨を選択しました。こちらも高級感があって気に入っているのですが、到着時は全体が油でコーティングされたような状態でした。おそらく酸化防止目的かと思います。ウエスで軽く拭き取ると綺麗な鏡面が出てきます。

加工方法はおそらくCNCフライス(3軸)で、目立った加工痕はなく、角のバリ取りも丁寧に処理されていました。

アルミケース組み立て

パーツが届いたので組み立て作業です。まずはトップケースとボトムケース、ウエイト、内蔵パーツを仮組みして全体のフィット感を確認しました。ネジ穴の位置や嵌合部分も設計通りで、しっかり固定される感覚に少し感動しました。

JLCPCBのCNCサービスのネジ穴
3Dプリント版では上下をマグネットで固定していましたが、今回は強度と安定性を優先してネジによる固定方式に変更。

Cörnium_screw_weight
ウエイトも同様にネジでしっかりと固定できるようにしています。

Cörnium_switch_Plate
また、今回はスイッチプレートや吸音フォームなどの内部パーツもあわせて準備しました。スイッチプレートはカーボンファイバー、ポリカーボネート、POMの3種類をタオバオで外注し好みの打鍵感を選べるようにしています。

Cörnium_switch_form
また、スイッチとPCBの間に挟むフォーム材として、ポロン製の吸音フォームをタオバオでオーダーしました。


さらに、今回の筐体に合わせて木製のパームレストもタオバオで手配しました。

Cörnium_palm_rest_oder
ちなみにパームレストはタオバオの天成主流というショップで木製品加工カスタムCNCというサービスを利用し300元で作成して貰いました。メッセージでCADデータと図面を投げれば作ってくれます。こちらは形状は問題なくピッタリで加工されたのですが、素材をホワイトオークでお願いしたはずなのに予想していた明るめの色味ではなくちょっと残念。

Corneのアルミケース完成
組み立て後の全体の剛性感や打鍵感はとても良く、アルミケースならではの高級感を感じられるものになりました。

Cörniumのウエイト
ウエイトも想定通りにピッタリはまったので一安心でした。

まとめ

CorneのアルミケースCörnium
当初はホワイトの粉体塗装のアルミケースでウエイトをステンレス(鏡面仕上げ)を目指して、AlibabaのRFQで複数の工場に見積もりを依頼しましたが、1セットのみの試作だとどうしても高額になってしまい断念。

魅力的な価格を提案してくれるところもあったが試作もせずいきなりお願いします!とは言えなく…

結果的にはJLCPCBの見積もりが交渉のストレスがなく最も現実的だった。発注手前にダメ元で相談したら最終的にはその流れからJLCPCBにスポンサーとして協力いただくこともできました。

販売・頒布予定

今回の製作については、YouTubeのコメント経由で「購入したい」とのお声をいただいておりますが、現時点では製造コストの関係で頒布は難しい状況です。ただし、ご希望される方が一定数いらっしゃり、発注先との価格交渉がうまくいけば、需要調査(IC)を行ったうえで、GB(グループバイ)や少数のストックによる頒布も検討したいと考えています。

また、そもそも頒布に値する製品かどうかの判断も難しいため、見識のある方に実際に触れていただき、ご意見を伺った上で、場合によっては再度試作を行うのも良いかもしれないと感じています。頒布に関してはまったくの初心者ですので、今後しっかりと勉強していくつもりです。

参考

グループバイの仕組み遊舎工房

学び

設計から加工発注に至るまで、ほとんどが初めてのチャレンジで学びが多かったです。とくにちょっと前に目立ってた2万円台でアルミケースのカスタムキーボードを製品化している某メーカーや、過去にGBや個人でストック販売をしてきた方々のすごさを身をもって実感しました。

謝辞

今回のアルミケース製作では、Corneのデータを公開してくださったfoostanさんや、設計の参考にしたサリチル酸さんの書籍に感謝しています。

また、スポンサーとしてサポートいただいたJLCPCBさん、動画を見てコメントをくださったYouTubeの皆さんにもお礼を申し上げます。

この経験を活かしてこれからもまったりマイペースにものづくりに挑戦していきます〜

きりぽん

この記事がなにかしらの参考になる部分があったら嬉しいです

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です